人材使い捨ての恐怖
ブラック企業とは
最先端技術を駆使して躍進し続けているIT業界は、昨今珍しい言葉でもなくなってきた「ブラック企業」の先がけでもありました。ただし、上司が怒ればすぐにパワハラと言ったり、給料が思うほど上がらなかったりと、嫌だと感じる要素があれば何でもブラック企業と判断してしまうのは間違っています。上司は管理職として部下を指導する立場にあるので、時には厳しいことを言わなければならない責任もあります。
パワハラと指導の見極めのポイントとしては、部下を育てたい、会社を良くしたいという本来あるべき上司としての動機があるかどうかが基本になりますが、上司から叱られるような要素があったとしても、人としての尊厳を傷つける方法で接してくるようであれば、いくら動機が良くてもそれはパワハラになります。
また、給与が望むほどに多くなくても適正に支払われているならばブラック企業とまでは言えませんが、残業や休日出勤などに対して賃金を支払わないのであれば、それは違法行為になります。そして、IT業界独特とも言えるのが、人材の使い捨てという現象です。
IT業界の35歳定年説
システムエンジニアとしての夢を持って企業に入社した人の多くが、早い段階で仕事を辞めたいと思うようになるのはなぜかというと、人材を使い捨てにしながら成長する企業のリアルな現状を見てしまったからということもあります。IT技術の進歩はとても早いので、数年前の情報や技術はもう古いということが当たり前です。そうなると、最新の情報や技術に柔軟に対応できる若い人材が歓迎され、古くなった経験と技術を持つ人材は不要とされてしまう状況が起きてしまいます。そのため、IT業界では35歳が定年とも言われてしまうようになりました。常に最新の感性を求め過ぎてしまい、古い人材を使い捨てにして新しい人材をどんどん入れるというやり方は、IT業界内では比較的安易に行われてしまっていて、それがブラック企業とも言われてしまう要因のひとつになっています。
しかし、人材をすぐに入れ替えてばかりいると、長期的に見たら結局は企業にとっては不利益になることも多く、見た目だけは何となく新しくても、技術力が足りないために質の低いシステムばかりを量産してしまうという結果にたどり着いてしまう恐れがあります。どんな技術でも長い経験がある人にしか出せないものがありますが、それはIT技術でも全く同じことです。本来あるべきなのは、新旧の人材が知恵と技術を出し合って、最新かつ高精度のシステムを作っていくよう協力できる環境を作ることで、そのようにして人材を大切に育てていくことが、本当に新しくて良いものを生み出す結果につながるのです。